お父さん

冷たい横殴りの雨の中、やっとの思いで帰宅した。

今日の最高気温は15℃だったらしい。人の熱気で温まった電車を降りると、
一気に身体は冷えてしまった。
帰宅時間にもなるともっと気温は下がっていたに違いない。
ストールをマフラーのように首にぐるぐる巻きにしても肩をすぼめてしまう。
強風であおられる傘を 冷たくて感覚のなくなった両手で必死に押さえ
ただ「早くオウチに帰りたい、早くオウチに・・・」唱えるように。
寒いのは大嫌いっ　＞Д＜っ

玄関で脱いだ靴は濡れた音を立てて転がった。スカートは見事に
前面だけが濡れて色が変わっていた。
リビングへ向かう前にそのまま洗面所に直行。あまりの寒さに
結局熱いシャワーを浴びた。

ひと息つくと、嵐と格闘している間に母から着信があったことに
気がついた。
折り返しかけると結婚式に招待する母方の遠方のゲストの話だった。

予定人数に見合った会場がなかなか見つからず、こじんまりする
つもりだったパーティは、人数を見直そうかと思い始めていた矢先のことだった。
気になる場所は60名以上の会場が多い。その内の1つはコーディネーターも
頼りがいのありそうな人で、その後何件か会場探しをしたものの
ここに優るところが見当たらない。

やっとの思いで帰宅した疲れ、なかなか会場が決められない不安、
加えてぐちゃぐちゃ言う母にイラつき始めたワタシは「もういいよ、どうでも」
・・・・言ってはならない一言が。
我に返って「お父さんはまだ帰ってないの？」と話をそらすつもりで
言ったのだが、父はすでに帰宅していたらしく、受話器は父に渡された。

父方の叔父叔母は近所に住んでいるので、夫婦単位で招待させてもらう予定。
「お前たちがこじんまりしたいのなら、叔父さんたちだけでもいいんだぞ」
と言う。
とにかくワタシたちの意思と都合に任せるとのこと。
思った通りの会場が見つからない上に、後から決まった友だちに先を越され、
結局最後になっちゃったよ〜ぅ。。゜(つ 口｀)゜。
泣き言を言うワタシに、父はいつもの落ち着いた口調で
「いいじゃないか、お前たちの思うようにしたら。ゆっくり頑張りなさい。な？」

不思議なくらい気持ちがしずまっていくのがわかった。
父の一言が鎮静剤となった。・・・・やっぱりお父さんはスゴイ。

大抵 母ともめて父に泣きつくことが多いのだが、いつだって父は落ち着いた口調で
「気にするな」とか「頑張れ」とか なんでもない一言を言う。
でも、そのなんでもない一言でワタシは冷静を取り戻す。
そして今日もまた・・・。　

結婚式では「お父さんの子で幸せです」とみんなの前で言ってあげよう。